みなさまこんにちは。
福岡店の村山です。
今回は、私が敬愛するデザイナー、マルタン・マルジェラが手掛けた『HERMES』の作品をご紹介します。
今回ご紹介する、こちらの作品(通称:「ライナーコートorジャケット」)。
マルタンマルジェラの功績の1つとも言えるのが、
「ライナー」を「アウター」として着用するというコンセプトを世に打ち出したことです。
このコンセプトが生まれたのは、1994年10月10日のこと。
自身のブランドでもある、「Maison Martin Margiela 1995年春夏コレクション」で、初めてモードの舞台に「ライナー」シリーズの服は登場しました。
現代では「ライナーコートorジャケット」は、ありとあらゆるブランドから商品化されており、定番アイテムとしてマス層にまで受け入れらているという事実があります。
つまり「時代を超越したコンセプト」であったということです。
それでは、この「時代を超越したコンセプト」について深く掘り下げていきましょう。
そもそも「ライナー」とは何か。
「ライナー」とは、コートなどの内側に取り付けられた、取り外し可能な裏地であり、「温度調整」等の役目があります。
つまり、メインで着用するものではなく、あくまでも「付属物」なのです。
彼は、その「付属物」という本来の役目(概念)を脱構築し、「アウター」という違う役目に役割転換させたのです。
即ち『既存の服を「本来の役目」とは「違う役目」として作り変えた』ということ。
これこそが、マルタンが最も重要とした、クリエイティブな(実験的)表現なのです。
(※この"クリエイティブな表現"を主として行っていたのが、 Maison Martin Margielaの「アーティザナル ⓪、⓪⑩」ライン です。)
この「コンセプト」を彼は『HERMES』でも用いました。
『HERMES』の伝統を守りつつ、最高の技術と素材を使い、表現したモノが、今回ご紹介しているこちらの「ライナー」シリーズの服。
HERMES /¥289,500(税込)/サイズ:40(M位) /オンラインショップで見る
こちらは、1998年秋冬 のアイテム。
素材 : カシミア100%
サイズ感は男女で着用可能なサイズ
パイピングの処理も非常に美しいです。肌触り、保温性ともに最高峰。
HERMES / ¥138,300(税込)/ サイズ:38(S位) / オンラインショップで見る
こちらは、2000年秋冬のアイテム。
素材 : カシミア93%,、シルク7%
サイズ感は、細身の男性でも着用可能
「アウター」としても「インナー」としても使用可能です。
"ラグジュアリーな服"でありながら、シンプルで上品、かつモードな服。
本来、"ラグジュアリーブランド"の服といえば、
「何か特別な時」や「街に出向く時」などに着用するための、ゴージャスな服というイメージがあるかと思います。
そんな"ラグジュアリーな服"をマルタンは、あくまでも「日常着」(最高に贅沢な日常着)として提案しました。
(マルタンらしさとHERMESらしさを残しつつ)。
これもある種の"ラグジュアリーな服"という「概念」そのものに対しての脱構築であり、「ラグジュアリーの服」から「日常着」へと役割転換をさせた...
と捉えることもできるのではないでしょうか。
ラグジュアリーの最高峰でもある『HERMES』と
破壊的かつ構築的な"美"を打ち出してきた『マルタンマルジェラ』。
「手仕事」といった共通する部分はあるにせよ、見かけは相反するモノ同士。
この相反するモノ同士がぶつかり合うことで生じる不協和音。
それは、「流行」という概念から逸脱し、
「普遍的で美しく、繊細で強烈なスピリットを秘めたモノ」。
「色気のある女性」ではななく、どちらかと言えば
「シックで垢抜けた、信念のある女性」に似合う服。
これが、【HERMES】 マルタン・マルジェラ時代の作品の魅力です。
作品に触れ、(インターネット上の情報だけではない)ありとあらゆる情報をインプットし、多層的に頭の中で再構築させる。
そうすることで、初めて、彼の生み出してきた"服"は理解可能となり、
その"服"はより「輝き」を放つのです。
いかがでしたでしょうか。
今回は、自身の考察も混じえながら、
簡単に【HERMES】 マルタン・マルジェラ時代の魅力を説明させていただきました。
他にも、まだまだお伝えしたいことは沢山あるのですが、
今回のブログのみでは収まりきれないので、この辺でお終いとさせていただきます。